第3期初級登山教室 登山実習「八ヶ岳・硫黄岳」


八ヶ岳・硫黄岳

360度パノラマの硫黄岳山頂にて


   日時  2015年9月5日(土)〜6日(日)
   行程  9月5日
         立川7:05発 美濃戸口バス停着10:00(注意・準備体操)10:30出発。
         美濃戸山荘着11:30〜12:00(昼食)〜12:50堰堤広場13:00〜赤岳鉱泉14:15着。
         中山展望台往復14:50〜16:15赤岳鉱泉帰着  夕食18:30
         9月6日
         赤岳鉱泉7:00出発〜8:50赤岩ノ頭9:00〜9:19硫黄岳 9:40硫黄岳出発。
         9:55赤岩の頭〜赤岳鉱泉着11:15(昼食)赤岳鉱泉出発12:15〜堰堤広場〜
         14:05美濃戸山荘14:15〜15:05美濃戸口バス停着
         美濃戸口15:25発 立川19:40帰着 解散。
   参加者 29名(受講生19名、スタッフ10名)
         〔1班〕L岡義男、SL芦川昌子、山行総合リーダー河野悠二、植草由利、小河今朝実、
             鹿島陽子、澤村雅人、竹内恭江、中原美佐代
         〔2班〕L西村智磨子、SL小松原勝久、講師:宮崎紘一、市川俊彦、齊藤理恵子、
             清水節美、中島かよ子、花渕順子、原順子、茂呂よしみ
         〔3班〕L武藤篤生、SL山本憲一、SP竹中彰、SP小野勝治、金丸恭子、川尻久美子、
             富田実智代、西山さより、松本敦子、吉川三鈴


9月5日
晴れやかな青空の下とは言い難いが、美濃戸口降り立った一行は、準備を整え、およそ60分の林道(落葉樹と針葉樹の混交林の中)歩きの後、美濃戸山荘に着く。途中、小さな岩の上に、この地を利用するものの安全を願ってか、古びた地蔵が祀られてあった。昼食をとり、更に林道を進む。やがて堰堤広場に到着。一息入れ北沢を渡り本格的な山道に入る。この谷を刻む沢を何度か渡り返しながら2220mの赤岳鉱泉の山荘まで300m弱の登り上げである。赤岳鉱泉着。山荘にザックを預け、身軽になって中山展望台に向かう。登り上げたそこには、大同心、小同心、横岳、赤岳、阿弥陀岳、権現岳の峰峯の姿が広がり、文三郎尾根の登山路がくきやかに見えていた。しばし、一同言葉もなく見とれ、シャッターを切る音が続く。途中の林床の苔が美しい。八ヶ岳の針葉樹林の林床を埋める苔の豊かさと美しさは、とみに有名なところ、明日の下山時には雨に濡れて輝く苔の姿が期待できるか?(雨を期待するとはと叱られそう!)あちらこちらに、沢山のキノコが顔を出している。思わず足を止めてしまう。食用キノコの判別のできる人には心躍る場面ではなかろうか? 鉱泉に帰着。順次入浴をして夕食を待つ。


中山展望台で赤岳をバックに

北沢を赤岳鉱泉へ登る


 夕食は、期待どおりのステーキを主体としたもの、分厚いステーキに舌鼓をうち、デザートにはナシとブドウと、おいしく頂く。山小屋食としてはとても贅沢なもの、山荘経営者の心意気であろうか。全員が満足した食事となったことかと思う。食後、1時間ほど懇親会がもたれ、岡さん手製のスモーク食品(ウズラの卵・チーズなど)とアルコールで、よもやま話を楽しんだ。


ステーキが焼けるのが待ち遠しい

メインのステーキの陶板焼き


9月6日
早朝、雨音は聞き取れない。鈍色の雲が覆い尽くす空を眺め、この状態が少しでも長く続くことを願う。下山の体調に不安を覚え、残留を希望する受講生を一人残し、7時、硫黄岳までの標高差540mの登りあげにはいる。針葉樹林の中(コメツガ・ウラジロモミ)ジグザグに高度を上げて行く。2550m、森林限界を超える。植生の変化について気を留めるよう宮崎講師から声がかかる。高木が姿を消し、ハイマツとシャクナゲなど、そして、裸地にと劇的に変化する。稜線に登り上げる。鈍色の空の中、展望が開けている。東側には、赤岳、阿弥陀、権現の山脈が、北西側には、硫黄岳に連なる八ヶ岳連峰の山々が連なり、その奥に八子ガ峰、蓼科高原、美ヶ原が、更に、西側奥ガスの先に、穂高の峯が望める。と、宮崎講師の説明に受講生から喜びの声が上がる。『登った山が確認できると言うことはとても嬉しいことですね!こうして一つ一つ山を覚えて行くのですね』と、受講生の言葉。赤岳の名の由来となったであろうか、赤岳の赤く焼けた山肌が目の中に飛び込んでくる。赤岳の下に見られる(大同心の)傾斜のある地層壁は、火山である八ヶ岳の峰峯が、現在のものより遙かに高かったことを示しているのかと、受講生に話しかけた。『そういうことなのですね』と。ジョウゴ沢からの風の吹き上げが強くなり、ジョウゴ沢が白いガスで埋められている。雨粒がポツポツと当たり出す。が、さほどの強い雨にはなりそうもない。雨具を装着して進む。砂礫の岩陰にトウヤクリンドウが風に揺れていた。この時期、花の数は極端に少ない(今回、目に留めた花は、ゲンノショウコ、カラマツソウ、オオモジソウ、アザミの仲間2種、コイワカガミの果穂、コバイケソウの果穂など他数種であった)


阿弥陀岳・赤岳をバックに2班/赤岩の頭

硫黄岳をバックに3班/赤岩の頭


 『岩にザックを当てないように!』との注意を受け岩場を慎重に通りきる。その先に平坦地が広まり、硫黄岳山頂の標識が目に入る。青空の下ではないが、360°展望が!! 1期生、2期生の事例に比したら幸運の一言につきる。火口壁の下(標高差500m)には本沢温泉の屋根が、そして、しらびそ小屋のある緑の台地がのびやかに広がっていた。眺望を楽しむ時間が少なく残念であるが、記念撮影の後直ちに下山に入る。赤岳鉱泉着。残留の受講生が笑顔で迎えてくれる。昼食をし、出発時間を迎えた頃、雨が降り出す。どうやら本格的な雨となるか?沢沿いの道が雨で濡れそぼる前に林道に出たいものと歩き出す。堰堤広場、美濃戸山荘で休憩。歩む両側の緑が雨に濡れて美しい。林床を埋める笹の葉のほのかな香りなど、聞きとってもらえただろうか? バスの待つ美濃戸口に向けて歩を進め、北沢に架かる橋を渡り、坂道を頑張って登り上げる。山荘の軒先で雨具の始末などをしていると、山荘の方から『中に入って身支度をどうぞ』との声がかかる。好意に甘え、身支度・パッキングを山荘の中で終わらせる。受講生から『山荘の方のご厚意に応えるため何か品物を購入した方が』との優しい心遣いを頂くが、心を鬼にして『バスに早く乗るように』との、リーダの指示に従うよう願った。山荘の方には、心を込めお礼を述べ許してもらうことにした。慌ただしくバスに乗車。バスの中で点呼。全員何事も無く帰路につく。途中渋滞はあったものの、予定時間より若干早く立川に帰着。解散となる。


硫黄岳山頂にて2班

硫黄岳山頂にて3班


特記
2班は、講師が同道であったので、各所で(地形図の読み取り、植生変化、眺望、岩場の通過時の注意、雨具の一寸した工夫など)的確な指示、指摘を受けることができ、大変幸運なことであった。この記録は2班を主としたもの。
(記録文/西村智磨子 写真/河野悠二・山本憲一)



上の写真は拡大してご覧になれます。写真の上をクリック。