「山の不思議発見:富士山御庭の自然観察会」報告



 日程: 2019年8月28日(水)
 行程: 谷保駅7:30 出発7:40=御庭登山口9:50→御庭観察12:30バスの中で昼食
       =谷保駅着15:40
 参加者 18名
      河野悠二・岡義雄・松川信子・茂出木協子・北原周子・小河今朝美・川尻久美子
      ・佐久間マサエ・佐古明美・木谷嘉子・富澤克禮・中村敦子・植草由利・丸山さかえ
      ・川村利子。会員外2名
 講師  小泉武栄 東京学芸大学名誉教授
 報告: 文/小河今朝美  写真/河野悠二


 昨年、『謎解き登山のススメ?地形・地質から植生を考える?』のタイトルで講演していただいた小泉武栄先生を講師にお願いした観察会。バスの中で岩殿山は、丹沢山系とほぼ同じころに隆起した礫岩の山、富士山には側火山(寄生火山とも呼ぶ)が100以上あり、その代表的な山は大室山という説明があった。中央高速を下りてからは、大昔は萱場だった所がほぼアカマツ林になり、スバルラインの料金所を過ぎるとアカマツの他にシラカバやクマシデなどの雑木林を眺めながら、御庭の駐車場に着いた。出発した時には、雨は降っていないが、途中から雨に降られた。





 御庭の登山口は赤茶色のスコリア(玄武岩質のマグマが空中に噴出し、マグマの中の気体が逃げ去り、多孔質で軽い火山砂礫となったもの)がある石段を登り、足元にはイタドリが咲いて、カラマツの根元にはコケモモが生えている所もある。近くのカラマツをよく見ると太い幹が2mぐらいで折れ曲がっているのに、若くて細い木は真っすぐに伸びている。理由は古いカラマツが風よけになり、若い木は、曲がることなく成長できた証である。富士山のてっぺんは噴火により塞がれているので、側溝のような割れ目噴火の跡があり、そこは左右が違う樹林帯になっている。片方は雑木林のようで、反対側には風下に枝を伸ばした旗型樹形のカラマツが数本だけ生えている。この違いは噴火で溶岩が流れたか、噴火により隆起したかの違いでもある。




 暫く歩くと、昨年の雪崩によって倒された樹々がある崩落地がある。同じ高さでえぐられた木の様子は、雪崩が原因とわかると知った。
別の所では、教えていただかないとわからない点々と噴火した跡の近くで、先生の本の写真にあるハイマツのように曲がった太いカラマツが生えている。雨と時折吹く強風の中で、大沢崩れの方に向かったが、山梨県により立入禁止という看板があり、その先の大澤崩れには行かなかった。下りながら、噴火から600年が過ぎた所は、スコリアが目立つが、白いミヤマハナゴケは動きが止まった岩に生えている。
噴火から1200年過ぎた所は、朽ちた草木で土はフカフカ、瑞々しい苔が生え、老年期を迎えたカラマツ、シラビソ、オオシラビソ、コメツガ、ダケカンバ、ハクサンシャクナゲなどの高さのある樹々の林になっている。
 その後、風が強くなり、奥庭には行かなかった。富士山だけに森林限界の最先端にカラマツが生えるのは、土壌の構成とカラマツの種子が乾燥に強いこと、カラマツの枝は強風でも折れにくく曲がれるなどの理由があった。今回は、講義で伺った富士山の不思議を実際に見られたこと、観察は不思議だと気づくことが大事だと実感できた有意義な観察会でした。
<咲いていた花>
イタドリ・メイゲツソウ(イタドリの赤い花)・ヤマハハコ・キオン・ミヤマアキノキリンソウ・シャクジョウソウ・ハクサンシャクナゲ・イワツメグサ・ヤマホタルブクロ・キソチドリ



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