シカ食害合同調査に参加して       (自然保護委員会)


 埼玉支部自然保護委員会では、支部発足以来シカ食害調査を続けておられ、今年で3年目、今回は埼玉支部から龍委員長をはじめ計10名の他、本部から1名、千葉支部から1名、東京多摩支部から2名(河野、岡)が参加させていただき、合同調査となった。  6月22日(土)曇 シカ食害調査に先駆けてこの日は秩父一帯の地形観察とウスバサイシンなど絶滅危惧植物の調査を行った。まず、西武秩父線「芦ヶ久保」からスタートして近くの里山の遊歩道近くで、花は咲き終わっていたが、元気なウスバサイシンを見付け、ちょっと安心した。盗掘やシカの食害に遭わないことを祈ってやまない。近くには断層にそって流れる小川があり、その右岸と左岸では植生が異なり、地質と植生の強い関係の一端を知ることができた。秩父には、この辺りが昔、海の底であったことを物語る層状の堆積岩の断面や、各種岩石が露出している場所が多く、その中の数箇所を見学した。地学に興味のある方は是非これらの地を訪れたいところだ。

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 写真−1:秩父駅の北西へ5Km,赤平川沿いにある「あがの化石館」裏の「ようぼけ」(陽のあたる崖という意味)。1500万年前の地層が露出している。 県境に関係なく山野を駆け巡り被害を発生させている鹿に対処すべく、我々も支部の垣根を取り払うために、赤平川上流の豪華な民宿に泊まって懇親を深めた。 6月23日(日)曇時々小雨 三峰神社から、雲取山への途中にある霧藻ヶ峰(1,523m)まで往復して、シカの食害の調査を行った。まず、神社を過ぎて山道にはいると一帯は熊笹の原なのだが、今年は笹の生育が悪いうえに、葉は鹿に食べられて茎だけが残っていた。1時間ほど登ると(妙法ヶ岳分岐付近)、登山道のすぐ脇にある2本の杉の木の皮が無残にもはぎ取られていて、まだ真新しい傷跡だった(写真―2)。近くに鹿の糞が残っていた。 霧藻ヶ岳小屋の主の話しによると、近くの地蔵峠から太陽寺方面(東側)に下ったところに、被害に遭った木が多いことを教えてもらったので、みんなで確認に行った。峠から30〜40分ばかり下り、登山道から100〜200m離れたところで、数十本の杉の木の皮が剥がれているのを発見。傷は古く、中には立枯れてしまった木も数本あった(写真―3)。近くにある道標の柱が、あたかも鋭い刃物で傷つけられたような傷跡を見ると、この辺りの被害はどうやら熊によるものではないかと予想される。

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鹿をはじめ、野生動物による食害のニュースは良く聞くが、どこも有効な対策が見つからず苦労しているようだ。網を張って彼らが入れないようにしても、そこの植物は守られるかもしれないが、その分、他の地域の植物が食べられるので、基本的には駆除以外の方法はないだろう。われわれ素人のボランティアがそこまでは手が出せないが、せめて一部地域の彼らの生息密度を調べることくらいならお手伝いできるのではないかと思い参加してみたが、一部地域すらその広に驚き、また問題の深さを知り、私が志したことが如何に「盲蛇」であったかと感じた。世の中で「どんな調査が、どのような方法で行われているのか」もっとしっかり勉強しなければいけないと痛感した。  どこまで貢献できるかは疑問だが、我々が楽しませてもらっているこの自然を、孫達の世代にも残したい一心に、「人間に都合の良い(?)自然保護活動」を続けなくてはならないとあらためて思った2日間でした。
(文章/岡  写真/河野)