三つ峠・絶滅危惧種観察と保護活動体験山行 ・・・・・・ 自然保護委員会


日程: 6月16日〜17日
コース:  16日  三ツ峠登山口林道最終…三ツ峠山荘…下草刈り作業地…三ツ峠山荘泊。
        17日  貴重植物観察の後、下山。  富士吉田駅解散。
参加者: 11名 宇野良夫、岡義雄、岡田陽子、柄澤洋城、城所邦夫、河野悠二、澤登均、
            西谷隆亘、西谷可恵、松本好正、西村智磨子 (岡田さん現地参加)

 三ツ峠山荘中村光吉さんから自然保護活動の話を聞き、絶滅危惧植物保護のための下草刈り作業を行うという呼びかけがあり参加した。東京を9時頃(柄澤車:国分寺9時、宇野車:高尾9時30分)車2台に分乗し出発した参加者は、偶然にサービスエリアでの休憩時に出逢い、三ツ峠登山口林道駐車場に車を止め、三ツ峠山荘を目指しての行動を開始する。
三ツ峠山荘に着くと、山荘の主中村さんから、明日は雨が降ることが確実なので、予定の下草刈り作業をこれからやりましょうとの提案を受け、身支度を調え、鍵をかけた鉄柵に守られる作業地に案内していただく。踏みつけの範囲を拡がらせないようにとの注意のもと、中村さんの足跡を忠実に辿る。
作業地は、三ツ峠より天上山上の尾根、南西斜面に拡がる多様性に富んだ草原・風衝草原の中にある。テンニンソウ、ギボシ、バイケイソウなどが優先して繁茂している。その中に、絶滅危惧種の指定を受ける植物が可憐な花をもたげていた。
 平成8年、山梨県より、保護する植物に悪影響を及ぼす懸念植物の積極的排除の許可が下り、ここに繁茂するテンニンソウを刈り取る作業が始められていた。テンニンソウは繁殖力の強い植物だけあって根をびっしりと広げており、他の植物に害を及ぼさないように注意しての刈り取り作業であった。小一時間もしたであろうか、雨が降り出し作業を中止、珍しい植物の話を伺いながら山荘に戻る。




 夕食前の一時、中村さんが20年来取り組んでこられた植生(自然)保護、盗掘防止の運動などについてお話頂く。絶滅危惧種の指定を受けるこの植物・アツモリソウ(ラン科)は、生育してゆくためには共生菌の存在が不可欠で、その助けをうけ存在しているとか、実際にどの菌糸類が共生でき、できないのかは未だ解明されていないという。
近くには、アオチドリ、トンボソウなどが観られ、同じ共生菌に依存する植物なのであろうということであった。中村さんの話は、この植物の生活史にもおよび、この植物の生活のタイムスケジュールのスパーンの大きさに思いを馳せた多彩な話がくりひろげられていった。植物(生物)たちは、それぞれが巧みな工夫を凝らし、その種を保存し繁殖をさせ続けてきた生活の歴史を持っている。ラン菌の分布が一様でないため、短期間での植生の再生は無理であろうが、個体数の激減した原因と思われる条件(盗掘、シカの食害、多人数による踏みつけ被害、単独植物の暴走繁茂による被害など)を徐々に排除して行き、彼たちの好む陽当たりと、風の通り抜ける風衝草原を回復し、この保護活動を継続してゆきたいとの決意をのべられた。この植物の保護に携わる熱い心が伝わってくる。
 この活動には、継続する多くの人手のサポートが必要であり、現在、その輪ができつつあるとか、更に、次につながる若人の参入を希望しておられた。又、何種かの貴重種を観るためご案内いただいたが、その名のここへの列記は避けたいと思う。 (自生地:北海道、下北半島から太平洋沿岸・三陸沿岸の山地、会津、日光、群馬、長野、山梨、神奈川、静岡、岐阜あたりが南限とされる ) 私たちも一過性の観察者としてではなく、何年かの関わりの中で、この活動の成果を確かめて行きたいものである。
(文:西村智磨子  写真:澤登 均)

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