2015年4月 定例山行/富士山五合目付近での残雪期雪上歩行練習


富士山五合目

富士山五合目にて

   日時   2015年4月29日(水・祝日)
   場所   富士山五合目 泉ヶ滝手前の雪田
   目的   残雪期雪上歩行技術の修得
   参加者  宮崎、小川、副島、小松原、木谷、広瀬、富永、濱野、酒井、清水、小野各委員
           坂本、西村、石井、中村(美)、川崎各会員  計16名
   行動   富士山駅8:40発=バス=9:50着五合目バス停10:20発〜10:35泉ヶ滝手手前の雪田
          15:20〜15:35五合目バス停停留所にて解散15:50=バス=河口湖駅=富士山駅17:40

 春のゴールデンウィーク初日、5月晴れに映える富士山を間近に観てとれる富士急行線富士山駅前に早朝から集まった会員12名の瞳は、これから始まる山行ヘの期待に満ち溢れて輝いていた。
富士スバルライン五合目駐車場に向かうバスは、我々12名の会員を含む25名の乗客を乗せ、1時間余りで目的地の五合目バス停留所に着いた。御坂山塊や三つ峠、道志の山並みが良く見える五合目の広い駐車場は、外国語が飛び交う観光客で満ち溢れ、日本語を聞く事は、殆どできなかった。
東京から自家用車で参加した4名の会員と合流し、外国人で賑わう小御岳神社を横目で見ながら、早々に五合目佐藤小屋方面に歩き始めた。
残雪の登山道を15分程歩くと、泉ヶ滝の手前右側の山肌斜面と大きな雪田があった。ここは平坦な山道が露出しているので、雪田の斜面を滑り落ちてもそこで止まると判断出来た。また、今の時期は、新雪が降らない限り、底雪崩を含めた雪崩の危険性は皆無に等しいと考え、この雪田を雪上歩行の練習場所に決めた。荷を降ろした後、本日の行動予定と雪上練習の基本事項とその注意点及び練習希望会員の班分けを行い、早々に練習の身支度を整えた。副島委員の号令で準備体操を済ませて、ピッケル片手に空身で雪上歩行練習を始めた。


第1班スタート

訓練前のミーティング


 この雪田は、横幅約100m高度差150m斜度15〜20度の規模である。今に時期は、雪が腐っていて、アイゼンを着用しなくても十分登高降できる状態であるが、練習生が傾斜のある雪面に馴染み、雪上歩行に慣れる為には、アイゼンを着用した方が良いと考えた。
練習希望会員を、持参したアイゼンによって軽アイゼン組と通常アイゼン組に分け、それぞれの組が最初は、高度差約15mの登高、下降、左右斜め登高と下降の練習を行った。軽アイゼン装着者は、ツァッケが短い分、腐った雪を捕える事が難しい。その為、しっかりと雪面に足を蹴り込んで歩行する必要に迫られるので通常アイゼン着装者と歩行技術が若干異なるし、歩行速度も遅くなる。軽アイゼン組には雪上歩行に慣れていない会員が多かった事もあり、宮崎委員が指導を行った。この組は、川崎、清水、富永、木谷、酒井の5会員が練習生となり、基本となる雪上歩行技術、ピッケルの持ち方、扱い方、キックステップを使った直登、下降、左右斜め登高、下降と体重移動時のバランスの保ち方を身振り、手振りを混ぜての熱心な指導の後、宮崎委員が自ら先頭の立って歩き、その後に5会員が続き、歩行感覚を体得する練習に励んだ。この組には、坂本(智)、石井両会員がそれぞれ練習生に付き添って指導を行った。
通常アイゼン組には、中村(美)、濱野、広瀬、西村、小松原の各委員が練習生として組み込まれた。小川委員から雪上歩行の基本動作や、それに伴うピッケルの扱い方に始まり、アイゼンを着装しての歩行時には、ツァッケを引っ掛けない足の運び方や、フラット・フィッティングを心がける事等の指導を受けてから直登降、斜登降、トラバース、方向転換時の足の運び方の歩行練習を行った。この組には、副島、小野委員が支援メンバーとして行動を共にした。練習開始直後の練習会員は、雪面に慣れて無い為か、緊張感を伴うギコチナサが目についていたが、傾斜のある雪面での歩行に慣れるに従って硬さもとれ、滑らかな自然の動作が見て取れるようになった。五月晴れの陽射しの強い中での2時間の練習は、気合が入っていた為か、アッという間に終わってしまった。


第2班メンバー

第2班スタート


 昼食の後の午後の練習は、午前中の反復練習を30分行った後、雪田の上部に登り、下りながらピッケルを使用した滑落停止の練習を行った。
雪が腐っている為、身体を雪面に投げ出すだけで停止する事は可能な状態であったが、それでも初めて滑落停止動作を経験する会員もいて戸惑いも見られた。しかし、滑落時にピッケルを利用して停止する動作を体験できた事は練習会員にとって意義のある事と考える。基本動作を体験したのであるから、今後自分で個々に練習をして技術を積み上げて行ってほしいと考える。検討材料として、滑落停止対応時、ピッケル頭部(ブレード部分)を持つ手の方向に身体をひねって雪面に倒れて停止する方法が自然と考えられるのでこの方法だけを教わった組とこの方法とは別にピッケル底部のシャフト(スピッツ近く)を持つ手の方向に身体を回して投げ出して停止する方法の二通りの対応法を教わった組と分かれてしまった事は、結果として練習した会員に混乱を与えた事となるので、今後は指導する立場にいる委員同士のコミュニケーションを図って、統一する必要があると考える。


滑落停止訓練

第1班メンバー


 滑落停止練習の後、アイゼンを外して高度差200m程上部までキックステップを使って登り、そして下降する練習を行ったが、会員は皆4時間程の練習で腐った雪面での歩行に慣れ、それほど緊張した様子もなく自信を持って下降やトラバース、方向転換を行って居た事は、雪上方向練習の効果の表れを見た気がした。
午後の休憩時間時、予定している五合目からのバスの乗車時刻まで未だ1時間50分あるので、予定のコース七合目付近まで登るか否か会員の意見を聞いたところ、楽しい雪上歩行練習ではあったが、できる事なら七合目まで登る事無く、帰路に着きたい思いの会員が半数以上だったので、下山時間を早めて帰路に着き、五合目駐車場で解散した。
今回の雪上歩行練習は、天候にも恵まれ、非常に歩きやすい状態の中での行動であった為、楽しく行ったが、自然は厳しい状態の時もあるので、決して安易な気持ちを抱かずに精進してほしいと考える。
(記録/小野勝昭 写真/坂本正智)





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