「事故発生時の現地対応シミュレーション講習会」報告

−安全対策委員会−

参加者集合写真

参加者集合写真


   日時   2018年11月3日(月)
   場所   奥多摩消防署と奥多摩町登計セラピーロード尾根広場
   参加者  赤坂憲子、石川さとみ、石原和子、植草由利、大澤則彰、北島英明、河野悠二、
          関根能男、佐藤守、清水茂美、内藤誠之郎、中尾理恵、中村哲也、中村照代、
          中村美奈子、濱野弘基、広瀬雅則、宮崎紘一、村岡庸こ、吉川三鈴、
          若村勝昭、石井秀典  計22名
   記録   石井秀典


 今回の講習会は、次の二つのプログラムに分けて実施した。午前が奥多摩消防署山岳救助隊による講習、午後が安全対策委員会による参加者全員での事故発生時の現地対応シミュレーション講習である。
(1)奥多摩消防署山岳救助隊による講習会
 奥多摩消防署4階講堂に集合した。講習会は、室内講習と野外講習があり、まずは室内講習から開始。同署齋藤係長から奥多摩地域の山岳事故発生状況、山岳救助隊の活動内容などをパワーポイントで分かり易く説明を受けた。奥多摩地域の遭難事故は相変わらず多く発生し、山岳救助隊活動の大変さが理解できた。次に、応急手当技術として三角巾の使用方法を受講した。二人一組となり、頭、腕、膝を負傷した際の応急手当をお互いに実施。応急手当技術は何度受講しても忘れることが多く、今後も機会を作り講習会を実施したい。最後に、山岳救助要請の連絡先、連絡必要事項などを質疑形式で説明を受けた。室内講習終了後、奥多摩消防署長の挨拶を受けて、野外講習会場に移動した。

三角巾の 使い方

奥多摩消防署座学説明会


 野外講習会は、山岳救助隊と連携しての救助活動シミュレーション実施だ。山岳救助隊と連携した講習は大変貴重な経験であり、参加者は緊張して消防署前の山岳救助隊訓練場所に集合した。シミュレーションは、山行中にパーティーの1名が転倒、下腿部分を負傷し自力歩行が困難、リーダーが救助要請するというストーリーで実施。参加者からパーティー要員7名(リーダ河野悠二)を選出。残りの参加者と消防署員が見守る中でシミュレーションを開始した。パーティ―が登山道を歩く。途中で1名が転倒転落。リーダーは事故者の許に急ぎ負傷状態を確認。全員に状況説明し、救助要請を決定。介護と記録担当を選出して事故者介護と事故記録を行う。リーダーは本番同様に奥多摩消防署へ救助要請の電話をする。消防署事故受付から「依頼者氏名、事故発生場所、発生状況、事故者の氏名、年齢、性別、住所、負傷状態、山行ルート、パーティー人数など」の質問があり、救助要請時の情報整理の必要性を実感した。山岳救助装備の隊員7名が担架等の救助用具を背負い駆け足で到着し、緊迫した空気に包まれる。山岳救助隊は隊長指揮の下で、まずは事故者の負傷状況を診断。一方、リーダーに対し事故発生状況、事故者の氏名や家族の連絡先などのヒアリングを実施する。事故者は担架で搬送されることになり、山岳救助隊の担架に乗せられて登山道を下山した。搬送先の病院は、消防署から家族へ連絡する仕組みであるとのこと。私達も事故者家族への早い連絡が必要であることが分かった。これで山岳救助隊との連携シミュレーション講習は終了したが、事故発生で緊迫する精神状況の中で救助活動を行う大変さを身をもって実感できた。そして、本番での事故発生が絶対にあってはならないことを強く認識した講習会であった。

奥多摩消防署(事故者応急手当)

奥多摩消防署(事故発生と負傷確認)


奥多摩消防署(事故者担架に移動)

奥多摩消防署(山岳救助隊到着)


奥多摩消防署(講習会質疑と講評)

奥多摩消防署(事故者担架搬送)


(2)参加者全員による事故発生時の現地対応シミュレーション講習会
 奥多摩消防署講習会の終了後、午後の講習会実施場所の奥多摩町登計森林セラピーロード尾根広場に移動。徒歩約20分で到着し昼食をとる。講習会の実施内容は、午前の講習会と同様のストーリーにより参加者全員で救助活動するシミュレーション講習だ。参加者をA班とB班に分け、その他に留守番会員、山岳救助隊、山小屋管理人の各担当を設定し、安全対策委員会の指示で各班ごとにシミュレーションを実施した。
A班パーティー9名は、リーダー(内藤誠之郎)、SL(サブリダー)、介護、記録、事故者に担当を分担し、次のストーリで救助活動を行った。@山行中に1名が転倒負傷(声をあげて尾根下部に倒れる)、Aリーダーは直ちにメンバー1名(介護担当)を伴い事故者の許に状況確認に出向く(安全確認を実施)、BSLはメンバーを集める(個人行動禁止と待機指示)、CSLは記録担当を指名(事故状況連絡票記録と写真撮影)、Dリーダーはパーティーに戻る(負傷状況を報告)、Eリ-ダーは自主救出困難と判断、救助要請を決定、Fリーダーは介護担当を追加指名(介護用具持参し事故者の許に)、Gリーダーは救助要請を準備(登山計画書、事故状況連絡票<記録担当より>、携帯電話通話状況など)、Hリーダーは山岳救助隊担当へ救助要請(関係資料を見ながら実施)、I更に、留守番会員担当へ事故発生を電話連絡(留守番会員担当は受信内容メモる)。これ以降のストーリ(山岳救助隊到着など)は、午前の講習会で実施済みのためにA班のシミュレーションは終了。
  次のB班の実施ストーリーもA班と同様であるが、携帯電話が通話不能を想定したシミュレーション実施だ。B班パーティー10名は、リーダー(中村哲也)、SL、介護、記録、事故者に加えて伝令の担当を設けた。A班実施ストーリーの@からGまでは同様に実施する。その後のH救助要請、I留守番会員への連絡が携帯電話不通で実施不能であり、その対応策として近くの山小屋に伝令を出して救助依頼するストーリーだ。前記G以降のシミュレーションは、Hリーダーは近くの山小屋に救助依頼を決断、I救助依頼に出向く「伝令担当」2名を指名。Jリーダーは伝令担当へ山小屋の場所、ルート、所要時間などを説明。伝令に必要資料(事故状況連絡票など)を渡す。K伝令担当は必要な登山用具一式(携帯電話、トランシーバー含む)を準備して出発。L伝令担当は山小屋(尾根上部に設定)に到着、山小屋管理人担当に事故状況連絡票等を見ながら救助依頼。M山小屋管理人担当は電話(無線)で山岳救助隊担当に救助要請、結果を伝令担当に伝える。N伝令担当は更に留守番会員へ事故発生連絡を依頼。、O伝令担当はトランシーバー(通話可能設定)でリーダーにその旨を連絡(山岳救助隊到着時間など)。及び山小屋を出発しパーティーに戻ることを連絡。以上でB班のシミュレーション実施は終了した。講習会ストーリーにはなかった「伝令行動中に携帯電話通話可能エリアがあった際の対応方法」の質問があったが、救助活動の緊急性から伝令担当者が山岳救助隊に救助要請することを説明した。
参加者の大部分は、山岳救助活動の未経験者であり一部行動に円滑化を欠く場面もあったが、安全対策委員会からの事故経験談を含めた各種アドバイス等を受けて、事故発生時における現地対応方法のイメージは掴んで貰えたものと思っている。


委員会講習(事故者介護)

委員会講習(講習実施説明)


委員会講習(実施結果講評)

委員会講習
(資料確認しながら救助要請電話中)


(3)追加講習会(ツエルト利用方法)の実施
事故発生時の現地対応シミュレーション講習は、15時30分に終了した。時間も早いので奥多摩BCに場所を移して、北島安全対策委員によるツエルト利用方法の追加講習会を行った。ツエルトの張り方、ツエルトでの山行実施方法(フォーカストビバーク)、緊急時の露営方法(フォーストビバーク)など、具体的にツエルト使用しての講習会であった。ツエルト利用は、安全登山には必要不可欠な技術であり、今後の安全登山に役立って貰いたいと期待している。





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