安全登山講習会 「体幹を鍛えて安全登山を」     安全委員会


安全登山講習会 「体幹を鍛えて安全登山を」

   日時   2015年12月10日(木)
   会場   立川市女性総合センター 第2学習室
   参加者  石井秀典、大船武彦、川越尚子、北原周子、河野悠二、小山幸男、酒井省二、
          佐久間マサエ、清水茂美、高橋郁子、高橋重之、竹中 彰、土井 充、
          富永真由美、中村照代、西村智磨子、西谷隆亘、平井康司、松本 元、
          八木佳苗、山本憲一、小山義雄 22名
   講師   宮崎喜美乃

 12月10日(木)、立川女性総合センターで開催。講師の宮崎喜美乃さんは山口県下関市出身。2013年鹿屋体育大学大学院体育学修士課程修了。山本正嘉教授の下で登山の運動生理学を研究し、2013年8月から株式会社ミウラ・ドルフィンズに入社。社内の常圧低酸素室で、酵素登山やトレッキングなどへの参加者に低酸素指導を行っている。高校・大学で全国駅伝に出場。IZU TRAIL Journey(2015年)女子総合2位、柴又100K(2015年)女子総合2位、SPA TRAIL(2015年)女子総合2位、Ultra Trail Mount Fuji(2015年)STYの部女子総合優勝など、注目のトレイルランナーでもある。12月6日にアメリカで50マイルレースに出場したばかりだった。

 講習は、宮ア講師の自己紹介に始まり、自身の研究から得たデータなどが紹介された。年齢とともに、筋力、バランス感覚、瞬発力などが衰えることは理解しやすいが、「年代別に見た登山者と一般人の脚筋力」では、山に行かない一般人と登山者の脚筋力に大きな差がないという結果だった。これは意外だった。また、平地での通常歩行を基準にした場合、一般レベルの登山中の筋活動水準というデータでは、登りでは大殿筋(お尻)、腓腹筋(ふくらはぎ)にとくに負担がかかり、下りでは、腹直筋(腹筋)、大腿直筋(大腿四頭筋の中心)に負担がかかる。外側広筋(大腿四頭筋の一つ)は上り下りとも大きな負担がかかる。膝がガクガクするというのがこれらしい。研究の結果は、どの年代でも快適な登山を行うには脚筋力の不足を証明している。月に何度か山に行っているから筋力があると思い込んではいけない、と宮ア講師。体力、筋力に応じた山歩きを心がけて欲しいと提案した。

登山は筋肉への負担が大きい

まずはストレッチから


 次に体幹とは何かが説明された。体幹は、頭と四肢以外の胴体であり、これを鍛えることで正しい姿勢が保ちやすくなる。それによって生まれる効果は@メタボ腹の解消A腰痛改善B疲れにくくなるC呼吸が楽になる、などが挙げられ、どれも山歩きには大きなメリットがある。体幹にはさまざまな筋肉があり、腹横筋は肺を広げたり閉じる役割、大殿筋、脊柱起立筋(背骨の両脇)は登りで活躍する。大腰筋、腸骨筋は下肢とつながり脚を引き上げる重要な役割を果たしている。こうした筋肉を鍛えることは、そのまま体幹を鍛えることになる。そこで体幹を鍛えるトレーニングに移った。


脚を横に振って脚の付け根を鍛える

椅子に座ったままで腹筋運動


 ストレッチに続いて、椅子に浅く腰掛け、腕を胸元で組んで前屈・後ろ伸ばしを繰り返す腹筋運動。座った状態で脚を素早く上下させる運動。宮ア講師の手拍子に合わせてスタート、ストップを繰り返す。これが意外と疲れる。次に、座ったまま正面を向き、体幹だけ左右に捻る運動。体軸をしっかり正面に向けるのが難しい。だから腹筋や脇腹に効果があるのだろう。次に大腿四頭筋に効くのが椅子に座ったまま片脚を伸ばして水平以上に上げる運動。腿がきゅっと締まって攣りそうだ。これを両脚でやるのは至難。どの運動も椅子の背もたれに背中をつけてはいけないというのがミソ。「お尻を使った運動」は、あぐらをかいて座り、両方の足の裏を合わせて股関節を広げる。次いでヤジロベエのように体を左右に揺らす。さらに円を描くように体を左右に回す。最後は両脚を投げ出してお尻を使って歩く「お尻歩き」。これには参加者も大汗。脇を捻る運動も加わるので、とてもよく「効く」。最後は呼吸筋のトレーニング。鎖骨の下を探って大胸筋ストレッチ。肋骨の間に指を入れる肋骨筋ストレッチ。ストローをぷっと吹くイメージの胸筋トレーニング。腹横筋を広げるトレーニング。どのトレーニングも、普段使わない筋肉を動かすので楽しかった。広い会場が確保できなかったのが残念だったが、宮ア講師の明るく楽しい指導で充実した講習会だったと思う。
(文・写真/小山義雄)


意外と疲れるお尻歩き

お尻を使って体を揺らす




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