安全登山講習会「ロープワーク・セルフレスキュー」


ロープワーク

   日時   2013年10月14日(月)
   会場   青梅丘陵第2休憩所付近
   参加者  飯島文夫、石井秀典、浦邉 充、岡 義雄、小川 武、小野勝昭、河野悠二、
           小松原勝久、酒井省二、副島一義、竹中 彰、長瀬秀史、西村智磨子、東 敦子、
           松本好正、宮崎紘一、武藤篤生、山本憲一、小山義雄  19名

 安全委員会では、より安全で楽しい山行の実現を願って、会員相互の知識・情報・技術の共有化と平準化を進めている。その一環として、会員向けの「安全登山講座」に引き続き、10月からは計3回の「安全登山講習会」を開催。その第1回として「ロープワーク・セルフレスキュー」を青梅丘陵で実施した。
 講師は、日本山岳会会員であり日本山岳ガイド協会認定の上級登攀ガイドを務める松原尚之(まつばら まさゆき)氏。東京多摩支部には松原ガイドと親しい会員も多く、幸運にも紹介していただいて開催に至った。

 青梅駅に集合した参加者の中にはクライミングの経験者、現在でも実践している会員もおり「玉石混淆」の感はあったが、和気藹々と枝垂れ桜で有名な梅岩寺脇から登山道に入り、10分ほどで会場の第2休憩所に到着。さっそく講習に入った。装備の基本は、登山教室PT、山行委員会が山行時に持参しているロープ、スリング、カラビナなど。
 講習の基本は、一般縦走路での緊急時対応。クライミングに使うハーネスを持参する山行は想定していない。万が一の場合には、持参しているスリングで簡易ハーネスを作る。まずはその作り方から始まった。参加者のうち所有者には、あらかじめカラビナ、スリングを用意してもらった。ボトム(腰回り)、アッパー(胸回り)それぞれにスリングを巻き付ける。始めはうまく行かなかった参加者もいたが、慣れてくるに従って「サマ」になってくる。

講習風景2

講習風景1


 続いて、ロープ結索の基本であるダブルエイトノットの結び方。カラビナ用、ハーネス用を指導される。こうした本格的な講習会は初めてということもあってか、緊張気味だった雰囲気もこのころから和んできた。マスト結び、半マスト結びへ進む。とくに半マストはよく使うため何度も繰り返して取り組んだ。ロープ結索は、ちょっとしたコツを掴めばスムーズだが、それまでがひと苦労。いくつかに分かれたグループからは「ああだ、こうだ、それ違う、できたよ」とさまざまな声が飛び交い、活気に満ちていた。
 負傷者への接近、難場での下降には懸垂下降が必要となることがある。エイト環やATCといった下降器がない場合を想定して、カラビナを使った半マスト結びでの懸垂下降を学んだ。第2休憩所の斜面を利用しての下降はヤブが多く、快適とはいえないが、操作に慣れてきた参加者の中には楽しんでいた者もいる。
 要救助者の引き上げでは、基本的な1/1、1/2、1/3システムを指導された。それぞれの数字は引き上げ者が負担する加重で、分母が大きいほど加重が軽減される。参加者は、実技を通じて人間の重さや、引き上げ、吊り上げにどのくらいの人数が必要なのかを実感したようだ。


吊上げシステム

フィックスロープ


 昼食を挟んで、フィックスロープの張り方、支点の取り方、通過方法、ロープの回収方法などを教わった。最後のテーマは負傷者の搬出。まず、レインジャケットとザック、ストックとザックを併用したオーソドックスな方法。次に、ザックのショルダーベルトに巻き付けたスリングを利用して背負う方法では、参加者から「なるほど」という声が上がった。背負われる方も「これは楽だ」とニンマリ。簡易ハーネスの着用が条件とはいえ、これは有効だ。
 松原ガイドが「3つのザックで担架を作ります」と言ったとき、どうやるんだろうと好奇の顔が集まった。詳細は説明しにくいが、ザックを裏返して縦に並べ、中央のショルダーベルトを外して、上下のショルダーベルトと繋げる。負傷者をザックの上に寝かせ、ヒップベルトで胴と足を固定する。ここでもまた「おお!」と歓声。負傷者役の参加者は「とても快適だった」と満足顔。そのほか、クライミングでは必須となる流動分散による支点確保は、縦走とはいえ万が一の場合にはより安全な確保手段だと実感した。


ザックでの搬送

ザックで担架


 東京多摩支部では初めての本格的講習会だったが、ハーネス、下降器、登高器、確保器などの種類・使い方も紹介され、盛りだくさんで充実したものとなった。ロープワークはつねに実践していないと自分のものにはならない。当日の講習で教わったことをいざというときに発揮するには、忘れないうちに復習することが必要だ。こうした講習会を続けていきたいと願っている。  (文・写真/小山義雄)

松原ガイド




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